市販のおやつなどが豊富にない時代、「やろこはちまき」は身近な山の果物で、子供たちの楽しみの一つでした。とても酸っぱい果物ですが、そんなことは気にせず、大人に叱られながらむしゃむしゃ食べたものです。
「やろこはちまき」は大人たちにも利用され、生活にもしっかりと溶け込んでいました。黒く熟した実を焼酎漬けにし、鮮やかな色を楽しんだり、大根の漬物の色づけなどとして使われていたということです。今となって、その鮮やかな色は生活習慣病の原因ともなっている活性酸素を消去するといわれる抗酸化物質の一つポリフェノールだったことが分かってきています。昔の人々は、そんな健康効果も知っていて活用していたのでしょう。
正式名称の「なつはぜ」というのは、夏のうちから櫨(はぜ)の木のように赤く紅葉するというこの特徴からきています。秋には、夏よりもさらに鮮やかな紅葉になり、果実が房状に実ります。最めは緑色ですが、熟すとともに黒色となります。その実には真ん中あたりにリング状の線があり、この線を、男の子が鉢巻きをしている姿に見立て、この地方の人々は「やろこ(男の子)はちまき(鉢巻き)」と呼んでいます。
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